Love me

 よく田舎にある、野つ原の真ん中に、灌木だの歯朶だのに、穴の縁を茂らせて、底には石や土が、埋めかけて匙を投げてある、あの古井戸の底になら、埃が溜つたつて、別に面白くも可笑しくもない。
 ところが、私の今云はうとしてゐる井戸は、一方には夫婦と三人の子供、もう一方には夫婦と二人の子供が、現在住んでゐる、その共通の井戸の事なのである。
 その共同の井戸に、然も蓋がしてあるのに、埃が底に溜つてしまつたのである。
 空気だの、日光だの、水などと云ふものは、そいつがふんだんにある場合には、些も不自由を感じないし、従つて有難味も分らないものだが、一旦、無いとなると、さあ事だ。
「水が飲みたあい」
 と、炎天の下で乾物になりさうな程も、焙られて怒鳴りながら駆けて、帰つた子供たちは、井戸に飛びついてポムプを押すのだが、井戸からは一滴の水も出ないのだ。出るのは、スー、フー、スー、フー、とポムプの溜息ばかりなのだ。

 あくまでも蒼く晴れ上つた空であり、渓谷には微風さへもない。
 表で遊んでゐる子等が「春が来た、春が来た」と唄ひ出した。十一月三日の明治節の国民運動会の日である。
 木曾川は底まで澄みきつて、両岸の紅葉を映してゐる。
 私が此夏、鮎釣りに泳ぎ渡つた際、大きな蟻に臍を食ひつかれて愕いた、竜宮岩も紅葉の間に浮んで、静もりかへつてゐる。
 竜宮岩といふのは、木曾川の中流に、島を為して残つてゐる一大岩塊で、高山の様子がある。そこへ登るには、ロッククライミング以外に手がない。その島の頂上に弁天様が祭つてある。その祠の前や、岩の間などに「土」のあるのを発見して、私は驚いた。

 発電所の掘鑿は進んだ。今はもう水面下五十尺に及んだ。
 三台のポムプは、昼夜間断なくモーターを焼く程働き続けていた。
 掘鑿の坑夫は、今や昼夜兼行であった。
 午前五時、午前九時、正午十二時、午後三時、午後六時には取入口から水路、発電所、堰堤と、各所から凄じい発破の轟音が起った。沢庵漬の重石程な岩石の破片が数町離れた農家の屋根を抜けて、囲炉裏へ飛び込んだ。
 農民は駐在所へ苦情を持ち込んだ。駐在所は会社の事務所に注意した。会社員は組員へ注意した。組員は名義人に注意した。名義人は下請に文句を言った。
 下請は世話役に文句を云った。世話役が坑夫に、
「もっと調子よくやれよ。八釜しくて仕様がないや」
「八釜しい奴あ、耳を塞いどけよ」
「そうじゃねえんだ。会社がうるせえんだよ」

 
 
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